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内海直仁さん(ジュエリーデザイナー) 第1回「既成概念よりも心身の声を聴く」

今回のupdaterは、英国のジュエリーデザイナー、内海直仁さん。18歳で日本を飛び出し、ロンドンで靴職人を目指した。以後、独学でジュエリー製作を学び、デザイナーに転身。2002年にロンドンで「RUST」を設立した。13年のインタビューでは「自由であることが一番の財産」と言っていた内海さんは、その後どう過ごしていたのだろうか。彼に会うため、イギリス南部のワイト島へ向かった。

時代や環境をこえて自分らしく生きるために

早川:今日はナオさんの拠点であるワイト島で7年ぶりにインタビューさせていただきます。
前回ロンドンのハットンガーデンでお会いしたとき、最後の質問で「時代や環境を越えて自分らしく生きていくためにもっとも大切なことは何か」とうかがいました。
そのときにおっしゃっていたのが、「大きな思想や目標の前にまず自分の周りの人と幸せや方向性について共有しておくこと」。
それから「自由に使える時間が大切」という二つでした。
あれから7年たって、ナオさんの変化や、いま思うことを聞かせていただけますか。

 

内海:一番の変化は子どもがもう1人できて2人になったことです。
子どもに目の前で泣かれたら何もできません。
前回は「自由になる時間が大事だ」と言っていましたが、そういうものが物理的に一気になくなってしまう状態です。
「幸せや方向性」という部分もまた違ったものになってきたと思います。

早川:前回お目にかかったときは、一人目のお子さんがまだ1歳くらいでしたね。
子育てをしながらも、ナオさんの軸がきちんとあり、仕事とのバランスが取れているように見えました。
お子さんが二人に増えてから、どういうところが大きく変わったのでしょうか。
そのあたりの背景をもう少し詳しくうかがいたいのですが。

内海:一人目のときはすべてが新鮮で、「大変なことが始まる」という部分で心の準備もできていましたし、子育てを楽しめたと思います。
家事育児を妻と50:50で分担しているので、「家事・育児の日」と「仕事の日」が交互に来る感じです。
家事と育児をする日は主夫で、仕事に行くことが自分にとって休日でした。

「子育てほど大変な仕事はこの世にないかもしれない」と思いましたね。
仕事に行く日は、自分にとってはオフのような感じで、すごく楽しめたのです。
何でもそうだと思うのですけど、ある程度スタートとゴールが見えていれば、力を入れることができます。
二人目ももちろん望んでいて、幸運にも授かったことには感謝しかないのですけど。
実際に子育てをするにあたって正直な気持ちを言うと、海に潜っていてやっと水面が見えたのに、また深いところにぐーっと引っ張られるような感覚でした。
それが子育てを毎日するにあたっての素直な心境です。

妻とは、男女平等や環境への配慮、政治や宗教で中立を保つことなど、いろいろなコンセプトを共有してきました。
最初の質問にあった「何が幸せか」という部分でも、ある程度道筋を立てて同意していたのです。
それにそってやってこられたのは幸福でしたが、身体的には無理が生じてきました。
大人相手であれば交渉できますが、乳児となると話し合いのしようがありません。
交渉という概念やアイデアを持ち寄る余地もないのです。

早川:その上、目が離せませんよね。

「コンセプト」の功罪

内海:そうなのです。ここ1、2年ぐらい疑問に思っていることですが、数万年という単位で、動物の雄は餌を取りに行き、雌は子どもを育てるという行動をとっていました。
人間もやはり動物ですから、遺伝子やホルモンの部分で逆らえない部分があるかもしれません。
そう思う一方で、「脳が発達しており、文明を持つ人間は、動物とは違う方向で進化しているかもしれない」とも考えます。
相反する部分のひずみをすごく体感しています。
そういう意味では7年前に思っていた幸せというのは成り立たないかもしれませんし、妻とも全部をわかりあえてはいなかったのかもしれません。

早川:奥さまはイギリスの方ですよね。

内海:そうです。西洋人はすごく頭を使う人種で、資本主義や男女平等といったコンセプト次々と発明して、提案、実行していきました。
すごく合理的ですし、一つの進化の方向だったと僕は思います。
ただ、自分たちの遺伝子や歴史に学べば、ひょっとしたら西洋的に頭で考えたコンセプトは不自然なことで、本当は得意なことに専念したほうがいいのかもしれません。
男女平等や女性の社会進出という考え方には価値がありますが、唯一の答えではないと思っています。
たとえば男性一人が収入を得て、女性は専業主婦をするほうがうまくいくケースもあるかもしれません。
最初から「うまくいくはずない」と判断しないで、いろいろと試しながら答えを出すことが大切ではないかと。

 

ぼくは「まだやれるはず」と思って、うまくいかなくなるまで突き進むタイプで、いまちょうどその過渡期にいます。
この町に住むことや、妻と一緒にいるという部分でも、「まだまだこんなものではないはず」と理想を高くして、行き詰まってしまうかもしれません。
砂浜に山を築いていくと、あるところまでいくと崩れてしまいますよね。
崩れても作り直すと、少し土台が広がります。
その崩れるところまで行く可能性はすごく高いと思っています。

早川:砂山が崩れても、作り直すうちに土台はどんどん広くなっていくのですよね。

内海:そうです。崩れた土台を使って、次にアダプト(適応)していく。
新しい自分を作り直すことをイメージできれば、本当の失敗というのはないと思います。
もちろんそこに波でさらわれたりしたらまた別ですけれども。
土台を大きくする作業ととらえれば、ネガティブに考える必要はないのかなと思います。

会社を起業して成功することや、結婚して夫婦円満でいることも、結局は誰かがつくった概念の一つだと感じます。
そう思えるようになったのはすごく大きいです。
正直にいうと、クリエイティブなことを仕事にするのは、渡英当初はもう無理だと思っていたのですよ。

早川:無理だと思っていた?


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