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大倉源次郎さん(能楽囃子方大倉流小鼓方十六世宗家)第4回「人間国宝になるということ」

大倉源次郎さんは間合い、掛け声、鼓の打ち込みの完璧な芸により、現代の能楽界において欠かせない重鎮である。
世界中の海外公演に参加し、子どもや初心者向けの能楽ワークショップや講演等にも力を入れ、普及や後進の育成にもつとめる。
その活動が評価され、2017年には59歳にして重要無形文化財保持者(各個認定)、通称人間国宝を受賞した。

だがその栄誉に浴するまでには、相当な苦悩があったようである。
彼が人間国宝としての責務を負うと決めるまでに何があったのだろうか。

能だけで生活できるのか?

早川:せっかくなので、なかなか表には出ない「能楽師と経済」について聞かせてください。
能専業で生活できるのでしょうか?

大倉:いや、なかなか難しいですよね。
私だってステージプロと言いたいところですが、実は鼓のお稽古事をされている方が何人もいてくださるおかげで生活基盤があるのです。
昔から「ニッパチ」といって、2月、8月は舞台の仕事がありません。
「春・秋のシーズンのときにしっかり稼いで、1年間何とかして食べていきなさい」という世界なので、生活保障は無いですし、変な話ですけど、百貨店の外商にも入れません。
クレジットカードも持てないんですよ。

早川:全然イメージと違います。

大倉:すごく大変な世界です。
私は父が亡くなった後に、中元と歳暮の手配を百貨店の外商に頼みに行ったのですが、断られました。

早川:本当ですか?

大倉:ええ。
平成4年に有限会社をつくって、毎月の給料を設定したのです。
そうしたら百貨店に入れました。
「なるほど、今の経済はこういうふうに動いているんだ」と実感したものです。
私は28歳で父を、32歳で母を亡くしています。
家というものがそこで崩壊してしまって、全部を一手に引き受けることになりました。
32歳のときに法人をつくって、社会の仕組みを勉強させていただきながら、どうにかこうにか食いつないでいます。
こんな話をしてもいいのでしょうか(笑)。

早川:普段はなかなか見えない部分なので、とても参考になります。

大倉:今、日本もそうですけど、世界中で生産性向上やグローバル化が叫ばれています。
そう言われても、私たちは容易にそこには行けません。
行ってしまって、能楽が本来持っているエネルギーが違う形になるのを危惧しています。
能が単なるエンターテインメントでないことは、能楽師はみんな認識しているわけです。
でも社会の中では、経済活動しないと生きていけないという矛盾がどうしても出てきます。
格差も広がっています。
私はすごく恵まれていますよ。
家元の子に生まれて、おかげさまでいろいろなタイトルも頂戴しました。
でも、能楽は1人ではできません。
生活文化として日本中が能楽を楽しんでくれないと。
いくら「私はえらいんだぞ」と言っても、裸の王様になったら意味がありません。
みなさんが楽しめる能楽、世界中の人が価値を認めてくれる能楽にしていくのが大事だと思います。
そうじゃないと、世界「遺産」になってしまいます。

人間国宝になったことで何が変わったか?

早川:リスナーの方からたくさん質問いただいています。
これだけは聞きたいという質問が多かったんですけど。
やはり人間国宝になる前と、なった後で変わったことはありますか?


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