fbpx skip to Main Content

大倉源次郎さん(能楽囃子方大倉流小鼓方十六世宗家)第2回「能には果てあるべからず」

能は完全な分業でなりたっている。

謡と演技を担当する「立方」は、シテ方・ワキ方・狂言方の三役。
伴奏をするのは「囃子方」で、笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方の四役から構成される。
それぞれの楽器に流儀があり、伝統的な奏法が受け継がれている。
大倉さんがあつかう小鼓は、拍子をつかさどるポピュラーな楽器だ。
左手で調緒(しらべお)という紐を握り、右肩に小鼓を載せて右手で打つ。
調緒を調整することによって、4、5種類の音色を奏でることができる。

幼いころから能楽にたずさわってきた大倉さんに、普段なかなか知ることのできない囃子方の世界について聞いた。

能を観賞するときの尺度とは?

早川:昔、現代アートを食わず嫌いしていたのですが、ある美術館の番組をプロデュースする機会をいただいて、いろんな知識を得てから、観るのがおもしろくなってきました。やはり知識は大切ですね。先ほどの翁の話を知るだけでも、次に観るときの深さが変わってきそうです。

大倉:どんどん、自分の視座が変わっていきます。
これは舞台を鑑賞する上で非常に重要なことだと思うんですよ。
バレエの公演を観に行ったら、身体表現のおもしろさや、音楽との絡みのすばらしさが楽しめます。
もし自分に能の尺度があれば、「能とバレエはどういうふうに違うのか」という視座を持つことができます。
それは作品を楽しむ源泉になりますから、1つでも多くの尺度を持つほど、興味が増すと思います。

早川:「能を観賞するときの尺度」とはどういうものでしょうか?

大倉:人間ができることって、限られているんですよ。
動作でいうと、飛んだり跳ねたり、手を振り回したり、声を出したりします。
打楽器なら叩いて演奏しますし、私の場合は掛け声をします。
「人的動力を使って何が表現できるか」ということだけなのです。
大音量のスピーカーや、今はやりのプロジェクションマッピングはあらゆるジャンルに適応はできますが、あとから付け足したものです。
生身の人間の表現手段は、「いかに動いているか」「いかに呼吸しているか」に限られています。
私は能に携わる人間の限界を知っているから、「あの人すごいな」とか、「こうしたらもっとおもしろくなるのに」と思います。
バレエダンサーのパトリック・デュポンさんや、パフォーマーの勅使河原三郎さんも、フランスと日本では、観たときの印象や、場の雰囲気が違いました。
小澤征爾さんも、幼少期に日本で見聞きしたときには、「N響とけんかして出て行ったわがままな人」という印象があったんです。
パリのオペラ座で彼が指揮した『エレクトラ』というオペラを観に行ったら、とてもすばらしくて。
チケットもほとんど売り切れていて、3階のバルコニーの3列目しかありませんでした。
その席はすごく安くて、カフェオレ1杯の値段なんです。

早川:500円くらいですから、本当に安いですよね。

大倉:チケットにはフランス語で「ほとんど見えません」と書いてあったのですが、そこで観賞したんです。
舞台は3分1ぐらいしか見えないものの、それぞれの曲がすばらしいし、終わったあとに拍手の厚みがすごいんです。
小澤征爾さんが出てきたときの拍手の質も全然違うと肌で感じました。
そのとき、私より後ろでワイン飲みながらずっと聴いている人がいたんです。


ここから下のコンテンツはLife Update Unlimited会員様向けのコンテンツです

ログイン

パスワードを忘れましたか?

» 新規会員登録はこちらから
Back To Top