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向井弘美さん(セラピスト/チューリヒ)第2回「『世界』で独り立ちするということ」

約170カ国もの人が暮らし、世界的な金融センターとして知られるチューリッヒ。そんな国際都市で文字通り「自分の腕」で勝負し、多くの顧客を抱えるセラピストの向井弘美さん。対談で印象的だったのは「ここで生まれ育った人と同じフィールドで同じように『戦う』ことはある時にあきらめた」のひとこと。しかし、一見ネガティブにも聞こえるその言葉の中には、私たちが「環境に左右されずに自分が大好きなことをし続ける」ためにはどうしたらいいか? その答えを導くためのヒントが隠されていた。今回は後編をお届けする(2014年8月チューリヒで対談)。

 

 

自分の手さえあれば、世界中のどこででも生きていける

早川  (中国整体の)どういうところにひかれたのですか?

向井  日本の指圧もそうですが、人の肌に触れて何かを感じるというのは東洋人の強みだと思うのですね。私も、もしできるのであれば自分で感じて、実践してみたいと思いました。よく、けがをしたときに「手当」という言葉を使いますし、手を当てるとなんとなく落ち着きますよね。手を当てることで癒やすことができれば、道具も何もいらないし、コンピューターも持っていかなくても、どこででも仕事ができます。私がもしスイスを離れることになっても、私の手さえあれば世界中の人達に手当をできるわけじゃないですか。そういうところに魅力を感じました。

中国整体のツボ押しは、西洋医学ともすごく関係しています。勉強しているうちに「西洋医学も合っているし、東洋医学とコンビネーションしたらすごくいいセラピーができる」「その人にあったセラピーの仕方ができる」ということに気がつきました。もちろん西洋医学の勉強も一生懸命頑張るのが前提にはなりますけれど。「これじゃなきゃいけない」と決めつけるのではなく「どちらの考え方も取り入れて、協力して病気を治そう。人の痛みを和らげる努力をしよう」ということができるという点で、西洋医学よりも東洋医学からアプローチしたほうが良いかなと思いました。

早川  僕も東洋医学にすごく興味があります。西洋医学の即効性や対症療法は短期的には良いと理解しているのですけれど、東洋医学の考え方もいいなと思っていて。ただ外国の方には「東洋医学の根本治療の考え方がピンとこない」と言われたことがあります。そのあたりは、実際はどうですか?

向井  簡単に言うと、西洋医学は悪い所、例えば癌ができたとしたら癌を切ってしまいますよね。「悪いところは切ってしまえばいいじゃないか」というのが西洋医学一つの考えかたです。東洋医学の場合は、「どうやってその癌と一緒に生きていくか」「すでにできちゃったものだから、なるべく痛みを和らげながら生活していけばいいんじゃないか」という考え方。関節が痛い場合も西洋医学なら「注射を打っておきましょう」となりますが、副作用のことなどは全然考えません。東洋医学だったら、関節が痛くなった原因や、普段の生活、よく行いがちな動作を分析しながら、「ではこうしてみましょう」と提案します。痛みと一緒に年老いていくのが普通で、なるべくならその痛みを和らげていこうということで、鍼治療したり漢方を使ったりします。

ですから悪いところをばっさり切るっていう発想がありません。痛みを和らげながら、「なぜそうなったのか」という根本の原因を探ります。痛みの原因が先天的な場合もありますが、普段の姿勢が悪かったり、食生活が偏っていたり、運動が足りないことが原因になっているときもありますよね。そういうライフスタイルの部分も含めて改善していくのが東洋医学なのです。生活、人生すべてが東洋医学に詰まっているので、「生きている間ずっと勉強していてもいいかな」っていうくらい奥が深いのです。そういう意味では終わりのない学問だと思いますね。

早川  日本人の感性や、東洋医学の奥深さって、やはり日本人だから何となく分かるのですが、それは西洋人にはなかなか理解が難しいのでしょうか?

向井  東洋医学や鍼、漢方を勉強しているスイス人も多いのですけれども、そういうことに気づいた方はすごくオープンなのですよね。意見が違うことも理解してくれますし、とっても寛容にいろんな情報を聞いて、自分にあったように理解してくれます。でも、スイスはもともと違う文化や考え方をあまり受け入れたがらない国で、すごく保守的です。中国指圧や整体、鍼も他の国に比べたら遅れています。最近でこそやっと病院に中国から鍼の先生を呼んだり、鍼の診療所ができたりしていますが、そこに至るまでの時間はものすごく長くかかっています。

それに比べてフランスやベルギーはとても早いのですよね。ちゃんと治療として認めていますし、ドクターというタイトルが出ます。スイスは新しいものを「これは良いものだから」と言ってすぐに取り入れる国ではないので、何年も何年も実験と研究を続けてやっと「いいよ」と許可する感じです。

もともとスイスは薬で有名な国なので、薬が売れなくなる心配があるのかもしれません。西洋医学にはすごく力を入れていて、薬の研究は盛んなのですけどね。中国整体は手だけでするので、何も売らないし、薬も注射も不要ですよね。そういうこともあって、なかなか認めてもらえないのかもしれません。

早川  学校で学びながらすぐに働き口を見つけたのですか?


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