向井弘美さん(セラピスト/チューリヒ)第1回「日本人の圧倒的な強みとは?」
約170カ国もの人が暮らし、世界的な金融センターとして知られるチューリッヒ。そんな国際都市で文字通り「自分の腕」で勝負し、多くの顧客を抱えるセラピストの向井弘美さん。対談で印象的だったのは「ここで生まれ育った人と同じフィールドで同じように『戦う』ことはある時にあきらめた」のひとこと。しかし、一見ネガティブにも聞こえるその言葉の中には、私たちが「環境に左右されずに自分が大好きなことをし続ける」ためにはどうしたらいいか? その答えを導くためのヒントが隠されていた。今回は前編をお届けする(2014年8月チューリヒで対談)。
ビジネスが盛んなチューリッヒで、人々の心身の疲れを癒やす
早川 今日はチューリッヒ郊外のアドリスヴィルで向井弘美さんにお話をうかがいます。このアドリスヴィルはどのような地域でしょうか?
向井 チューリッヒ市内にお仕事に行く方のベットタウンというか、一番近い隣の町なのです。高速道路から公共のバスや電車が定期的に走っているため交通の便が良く、ここ5、6年で移り住んだ若い家族もたくさんいます。自然もとても多いですし、住みやすい町だと思います。歩いて1分もしたら森の中に入り、ハリネズミが出てくるような自然がいっぱいの素敵な町です。
早川 僕もここまで歩いてきたのですが、本当に静かで自然がいっぱいですよね。
向井 市内を離れてすぐにこういう自然が広がっていて、マイナスイオンをたくさん浴びることができます。仕事に行って帰ってくる間に、牛や馬にも出合ったりして。通勤する道がいまだに砂利道だったりするのも私は大好きですね。
早川 普段はどういう感じでお仕事をされているのですか?
向井 マッサージセラピストをしています。本来なら一つの診療所でやるものですが、まだ本格的に始めてから1年くらいなので、3つの仕事場をかけもちしています。週の40%くらいは市内にあるスパ、もう一つはフィットネスクラブ、その以外の空いた時間を使って、自分の診療所で仕事をしています。
早川 具体的にどのようなことをされているのでしょうか?
向井 私がセラピーを始めたきっかけは、中国整体でした。たまたま行ったのが中国整体の専門学校だったので、最初はツボ押しなどを基本に診療をしていました。でも、それだけだと人が癒やされるテクニックが少ないと感じました。時々痛かったり、ツボに入りすぎてリラックスできなかったりすることがあって。「何か他のものとコンビネーションしてみたらどうかな」と思って、ヨーロッパのクラシックマッサージや、イングランドのリフレクソロジーの基礎を勉強しました。
最近はリンパトレナージュが日本の女性の間でも人気ですよね。そういうやり方で「癒やされたい」と感じている方にはリラックスしていただいて、そこに痛みやコリを和らげる中国整体のテクニックをコンビネーションしているという感じですね。心も身体も癒やして、その週にたまったストレスを解消して元気になってもらいたいと思って、試行錯誤しながらやっているところです。
早川 中国整体のバックボーンがあるというのがいいですね。
向井 ツボによっては、押すだけで内臓の器官の弱っているところが分かるし、なぜ偏頭痛があるのかなどの原因を探っていくこともできるし、やっぱり理にかなっていると思います。「ここが疲れているのはこういう原因だから」というのが、私なりに理解できるのでクライアントの方にも説明しやすいです。リフレクソロジーをしているときも、クライアントに「胃が弱っていますね」と言うと「ちょっと胃が弱いんだ」と相談してくれたりします。私のところでは、セラピストだけが頑張ればいいというのではなく「自分の弱っているところを元気にしたいから、二人三脚で一緒に頑張っていこう」という思いを持ったクライアントが多いですね。
早川 スパやフィットネスの場合は、そこに来てくれた会員などがお客様になってくれると思いますが、ご自身の診療所のクライアントはどうやって確保しているのですか?