倉本貴之さん(カフェ経営/バイロンベイ)第2回「『木』に学ぶ成長戦略」
オーガニック、美しい海、ヨガの聖地、フェスの街……バイロンベイ。そんなバイロンの森で隠れ家的なカフェを経営する倉本貴之さん。彼の強みは、その「類稀なるバランス感覚」にある。
熱いハートと冷静な頭脳。大胆な行動力と立ち止まって俯瞰する力。デザインセンスと経営センス……強烈なインスピレーションとモチベーションを受け取ったインタビューとなった。
後編では、独自の成長戦略についてうかがった(2015年4月バイロンベイで対談)。
海外で成功し続けるために必要なこと
早川 なぜこのバイロンで、やってこられているとお考えですか。
バイロンベイはすばらしいし、私も住みたいと思ってしまうところですよね。普通にきていたら、いい意味で、ここを出られなくなっちゃいそうなくらい(笑)。そうはいっても、経営者として続けていくのは、話が違ってきますよね。先ほどの進歩の話を聞いていても、すばらしいところではあっても、そこで勝負するというのは別の話じゃないですか。
私は旅行が大好きなんですが、かと言って、旅行代理店をやろうかとか勤めようかというのは、別の話じゃないですか。それだったら旅行代理店ではなくて旅行していたほうがいい。そういう意味で、実際にここがいいなと思うのと、経営者としてやり続けることは違いますよね。
ご自身では謙遜されていますが、成功されているとはいえ、やり続けられている理由、自分の強みといえるかもしれないですが、それは何だとご自身で思いますか。
倉本 実際見えるところで言ったら、ここで長く働いて、前に働いていた寿司屋さんの人気と知名度もあったということ。あそこのシェフがここでやっているよと、最初はそういうかたちでぱらぱらとお客さんがきてくれていた。日本人の知り合いも多いじゃないですか。人とのつながりは大きいと思いますね。
見えないところで言ったら、奥さんによく言われるのは、スーパーポジティブ。何かやり始めたら、絶対いけるって思ってしまうんですよね。
早川 私もスーパーポジティブなんですよ。一緒にされたら心外かもしれないですが、スーパーポジティブというのは、いいときはいいけれど、逆にその反面、スーパーネガティブになったり、上滑りしちゃったりとかいうことが私はあるんですが、そんなことはありますか?
倉本 うちのビジネスパートナーは、結構ネガティブなんですよ。だから、彼がいることによって自分のバランスがとれているんです。俺が「行っちゃえ」というときに、「絶対だめだよ」みたいな。なぜと思うんですが、ふたをあけてみると、いいところで帳尻があったりして。
すごくポジティブな人はすごくネガティブなところを持っていると言うじゃないですか。それもあるんでしょうけれど、自分としてはまだわからないかなあ。
早川 逆にいうと、その彼がいるから、スーパーポジティブになれているところもあるでしょうね。本当に1人でやっていたらたぶん……。
倉本 だめなんだと思いますよ。……いや、これいいインタビューですね。
早川 今気づきました?(笑)
倉本 (笑)。彼には本当に感謝しています。ここをオープンするときも、もともと狭いキッチンで壁に油がついているような汚いところだったんですが、私は、料理がよかったら人が来るだろうくらいにしか考えていなかったんです。改装するというアイデアも彼でしたし。今考えてみると、彼がいなかったら、今のようにはなっていないだろうとは思いますね。
早川 その彼とは、お寿司屋さんで知り合ったんですか。
倉本 そうです。
早川 最初に入ったときから一緒だったんですか?
倉本 最初に4人のシェフで始めたんですが、私がこの4人の中で最後に入ったんです。1、2週間遅く。
早川 私は今こうして毎月いろいろなところに行って、海外で起業した方、成功した方にたくさんお会いしています。その中で大多数の方がおっしゃるのが、何かビジネスを成功させるためには、人とのつながりは不可欠だということ。その中でも、現地のビジネスパートナーがすごく重要だということをたびたびうかがってきたので、最初に倉本さんのビジネスパートナーと聞いて、日本の方だとは思わなかったんです。もちろん、オーストラリアの方で、協力してくださっている方はたくさんいるとは思うんですが。いい悪いではなく、日本人のビジネスパートナーというのが意外だったんです。海外でビジネスを成功させようというときに、現地の人を入れておこうという発想はなかったんですか。もしくは、何らかのかたちであるのかもしれないですが。