池坊専好さん(華道家元池坊次期家元)第2回「いけばなの『効きめ』」
いけばなの源流は、6世紀に仏教とともに伝来した仏に花を供える風習(仏前供花)だといわれている。仏教が生まれたインドでは蓮の花が供花とされたが、日本ではそれぞれの季節に応じた花が選ばれた。唐物の器に花を挿す形に工夫がほどこされ、室町時代初期に日本独自の文化「いけばな」が成立した。戦国時代に活躍した初代池坊専好は、映画「花いくさ」の主人公にもなっている。長い歴史の中で育まれてきた、池坊いけばなの真髄とは? 花を生けることは、自然の花を愛でることとどう違うのだろうか?(2018年7月対談)。
世界中から生徒が集まるいけばな学校の英語クラス
早川:今池坊いけばなはどのくらいの方が習っているんですか?
池坊:日本に400、海外に100の支部があります。
早川:その支部は教室の数ですか?
池坊:先生方が、地域で作っているグループのようなイメージです。
早川:その数字やスケール感について、専好さんはどう感じているのでしょうか。
池坊:それだけの支部があるということは、多くの先生方が地域に根差して生徒さんを教えてくださった歴史の積み重ねですから、本当にありがたいです。
同時に、「いけばなが生活文化として定着しているんだな」ということも感じます。
一部の天才だけがするのではなく、誰でも日々の生活に取り入れられるのが、いけばなのすばらしさだと思います。
それを支えてくださっているのは、先生方と習ってくださる方お一人ひとりの存在です。
早川:専好さんは海外にも普及活動に行かれています。
観光や留学でいらっしゃる外国人で、いけばなを習う方は増えているのでしょうか?
池坊:ちょうど、2018年の4月から「英語コース」というのを始めたんです。
中央研修学院という、いけばなを学ぶ人のためのクラスです。
春、夏、秋、冬に1週間ずつ京都に滞在して、午前中は講義、午後実習を受けます。
年間では20日間ですね。
もともと日本人向けのクラスはあったんですけど、最近海外の方が「いけばなを学びたい」というリクエストが増えてきました。
英語コースを立ち上げたら、アメリカやアジア、ヨーロッパ、世界中から生徒さんが来てくださっています。
早川:いけばなのルーツは仏前供花ですよね?
池坊:仏教が中国から伝来したときに、仏前供花という文化も一緒にやってきました。
床の間という空間で、日本の美意識や哲学も織り込みながら芸術的に洗練させていき、池坊いけばなという形を作り上げたのです。
早川:そういう意味では、中国やインドの方にとっては、逆輸入という感覚があるのでしょうか?
池坊:今、中国人の生徒さんもとても増えていますが、あまりそういう意識はないみたいです。
上海や北京のかたがたなんですけど、皆さん本当に熱心に勉強してくださっています。
華道がめざす「道」とは
早川:ちょうど海外のリスナーさんからも質問をいただいています。
「海外では、茶道、武道など、さまざまな○○道が注目されていますが、華道はひとことで言うとどんな道なのでしょうか」